兜牛バックヤード
ナスダックの「クジラ」説に懐疑論、ハイテク株高の原動力巡り
2020年9月8日 10:00
①ソフトバンクグループが米ハイテク株に賭けるオプションを使い数十億ドルの含み益を得ているとの報道は、同社が株価上昇の原動力になった可能性を巡る臆測をかき立てているが、誰もがそう確信しているわけではない。
ヘッジファンドのQVRアドバイザーズのベン・アイフェルト最高投資責任者によれば、ソフトバンクGなどの大口投資家が追求するような戦略が株式市場のボラティリティーに与える影響は最小限にとどまることが証拠から示されているという。デリバティブ(金融派生商品)トレーディングデスクのコメントを引用したアイフェルト氏は、本当に影響したのはハイテク株のコールオプション(買う権利)を大量に買っているデイトレーダーだと話した。
同氏の分析は、オプション取引急増の背後にいるのは誰か、それが投資家にとって何を意味するのかについて、株式市場で盛り上がる議論に一石を投じるものだ。英紙フィナンシャル・タイムズ(FT) の週末の報道によると、ソフトバンクGは、過去数カ月間で40億ドル(約4250億円)をハイテク株の株式デリバティブ購入に投じた。
複数のアナリストは、大口投資家の影響力が市場の残りの部分に比べれば依然として小さめだと指摘する。サンダイアル・キャピタルのジェイソン・ゲッフェルト氏が集計したオプション・クリアリング・コープのデータによると、小口投資家は1カ月でコールに400億ドルを支払ったという。
③確かに、注文の流れを見ただけでは、誰が取引の背後にいるのかを正確に知ることは不可能だ。ラ・フィナンシエール・コンスタンスの幹部カンビズ・カゼミ氏の話では、大口投資家のトレードの一部は相対取引で行われた可能性が高く、その市場全般への影響を見極めることは難しいという。
RBCキャピタル・マーケッツのストラテジスト、 エイミー・ウー・シルバーマン氏によれば、大口投資家と小口投資家のオプション売買がいずれも市場のボラティリティーを高めた公算が大きい。シルバーマン氏は7日のリポートで、コールオプションの売買が3月、4月、5月に急増した背景には、小口投資家がロビンフッドで口座を開設しデイトレーディングに熱狂し始めたことがあると分析。規模が小さめの取引が急増したのは個人投資家の典型的な足跡だと指摘した。
②資家の影響力の証拠は取引タイプの解析に示されている。個人投資家は通常2週間以内に満期日を迎えるコールオプションを買う。満期日までの期間が短い性質上、マーケットメーカーはヘッジが必要になり、それが株価上昇をあおったというわけだ。
対照的に、大口投資家が好む取引では、マーケットメーカーは必ずしもヘッジのため現物株を売買する必要はない。大口投資家は相場上昇で利益を確保しつつリスクも限定する手法であるコールスプレッド買い・現物株売りといった戦略を使う傾向があるという。
アイフェルト氏はツイッターで、「こうした取引自体は、意味のある買い圧力を表すものではなかった」とし、コールスプレッド取引は、S&P500種株価指数と予想変動率の指標であるシカゴ・オプション取引所(CBOE)ボラティリティー指数(VIX)が同時に上昇するという奇妙な現象に寄与したと付け加えた。
④同氏はまた、ハイテクセクターに大口取引が入り始めたのは8月だとし、少数のテクノロジー企業に絡んだコールスプレッド取引を大口投資家によるものの特徴として挙げた。こうした取引は8月5日にマイクロソフトやフェイスブック、アドビなどのオプションで行われており、その頃までにはナスダック100指数は3月の安値から60%程度上昇していたため、大口投資家は他の投資家に追随したにすぎないことを示唆している
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